「百年語り」 作:松橋 勇蔵 脚色・構成・演出:結 純子 1984年、関根浜に原子力船「むつ」の問題が起きた年、この作品はできた。その時、すでに、この芝居の中で予告された危機は、今、更なる痛みの深みへと沈んでゆく。 移りゆく時の、痛みを一手に引き受け、芝居も変わってゆく。 その世界は、南米コロンビアの作家ガルシア・マルケスの「百年の孤独」とイメージが重なる。 関根浜はどうなるのか、芝居は語らない。
−語り残さなければならぬ歴史がある。北の辺の風に吹かれた村の小さいが故に語られねばならぬ歴史がある− 明治38年、飢饉つづきで、四男坊の亀二は一番年上になっていた。親子六人、生まれ故郷の八戸を捨て命がけで北に向かった。亀二、六才の時だった。 辿り着いたのは本州の北の果て、下北半島の関根浜。「漁師に学問はいらねえ」の一言で小学校をやめさせられ、亀二は漁師になった。 イワシの地曳き番屋で働き、イカ釣りをやり、厳しい自然のもと成長した彼は、やがてブリの定置網の親方になる。 その間に、父が死に、戦争があったが、亀二は関根浜の自然を愛し、海の男として誇らしく生きた。 その関根浜に、原子力船「むち」の問題が振りかかる。 今語らねば忘れられてしまうだろう関根浜の歴史。 愚安亭遊佐の父の物語。
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