「角海浜(かくみはま)物語」 作・演出:松橋 勇蔵 新潟県巻町に消えた村、角海浜がある。 原発予定地となり、村人は去った。しかし、原発は建設されなかった。 かつて、240軒の軒を連ねた浜は草ぼうぼうの荒地と化した。 そこを吹き抜ける風の中に、この村に最後まで居続けたヨネさんの声が聞こえる。
−角海浜と共に生きた女の生涯−
『角海浜は私の生まれ故郷。そして私は、その浜の最後の住人でありましたすけのう』
『角海浜を離れて、5年後、東京に住んでいた私の元に風のうわさが聞こえてきました。 「解体業者がヨノさんの家を壊したそうです。 その時、仏壇を外にほうりなげ、火をつけたそうです。」 泣きましたえ、ただ、ただ泣きましたえ』
−250年前、240軒あった家は、皆消えた。 ここで生まれ、ここで育ち、ここで結ばれ、子を生み、育て、ここで老いて、死ぬはずだったのに、ここを出てゆかなきゃならないとは! ああ、我が心の海岸決壊! 崩れゆく、消えゆく海の中へ、250年の歴史の深みへ、いとしの角海の浜風に吹かれて。
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